“春日 歩” の検索結果 | 今日もだらだら、読書日記。

キーワード:春日 歩 (2 件 / 1 ページ)

彼と人喰いの日常

 

「初めまして。大神黒衣と申します」突如転校してきたその美少女は、高校生神咲十夜の“自称婚約者”。だがその正体は…。『月に一度、人を喰わせてもらう。それがわしとの契約じゃ』殺されかけていた十夜が、助かるために契約してしまった人喰いの妖だった!契約に従い、毎月一人誰かを彼女に喰わせなければいけなくなった十夜。「大神さんは、十夜くんとはどういう関係なんですか!?」だがそんな事情とはお構いなしに、幼馴染の来海立夏が黒衣に話しかける。これは、妖と暮らすことになってしまった少年の“板挟みな日常”の物語。『末長く、よろしく頼むぞ我が主』第3回GA文庫大賞奨励賞受賞作。(「BOOK」データベースより)

個人的お気に入り度数

 虐めを受けていた最中に自分に語りかけてきた謎の存在に誘われるまま、契約を結んでしまった十夜。それは人喰いの妖である『彼女』を使役できるかわりに、毎月1人ずつ殺しても良い人間を提示しなければいけないというもので……というお話。

 黒衣とほぼ無理矢理契約させられてしまい、自分が手を下さないとしても誰かの生命を左右するだけの能力を握らされてしまって思い悩むという序盤の展開は凄く良かったです。死ぬ人間も自由に選ぶ事が出来て、死刑直前の人間とか、もう死ぬのが確定している人間でも構わない。でも、それでも人間の生命を奪うのは普通の高校生にはあまりにも重くて……という展開が良かった。

 ……んだけど、その後の展開が…これ乱丁で一章分抜けてるんじゃないよね?もう完全に状況に流されたとしか思えないというか、行動が全体的に軽すぎる。なんかあんまり葛藤もしてないし、色々と重たい選択をしてるはずなのにそれが全然見えてこない。

 そしてラスト。契約を破棄する方法を提示てなおかつ現状を維持するってめちゃくちゃ重い選択だと思うのに、主人公が黒衣に対してそこまで入れ込む理由が全く見えなかった。もうちょっとこう、主人公と黒衣が距離を詰めるエピソードがないと感情移入不能っていうか、全体的に本当にキャラクターが物語に動かされてるという印象しか受けなかった。

 一昔前の電撃や富士見にちょくちょくあった、いわゆる「暗黒ラノベ」的な重たい話が読みたいなあとおもって、物凄く期待して手に取ったのに、色々な意味で残念でした。


引きこもり勇者VS学級委員長まおう

 

魔王の和平申し出により、勇者はいらない子になった?。そして引きこもりになってしまった彼の前に現れた少女は、学級委員長に就任した魔王!?毎日何かと訪ねてくる魔王は勇者の部屋にあるゲームに興味津々。一緒に遊んで打ち解けていく二人だったが、ある日魔王が再び学校へ来るよう言い出し、勇者はそれを断固拒否!やがて事態は勇者パーティと魔王軍を巻き込む一大事に!!引きこもりか登校か!?勇者と魔王のファンタジック・コメディ、開演!(「BOOK」データベースより)

 魔王に対抗できる「勇者」として育てられたにもかかわらず、魔王が和平を申し出てしまったせいで出番がなかった勇者。学校にも行かず、引きこもりとなった彼のもとにプリントを届けに来た同じクラスの学級委員長は、なんと当の「魔王」本人で…!?

 幼い頃から「勇者」として育てられたことや身に着けた能力のせいで平和になっても日常生活に馴染めない勇者、周囲の反対を押し切って人間との和平を実現した魔王。設定だけを羅列してみると二人とも結構大変な人生を歩んできているのにもかかわらずそういう重さは一切感じさせず、ただただ笑いに転嫁して「学校に行きたくない勇者」vs「学校に行かせたい魔王」の馴れ合いに終始してるのがとても楽しい。特に最終決戦には腹を抱えて笑ってしまった。

 ある時は冷たく追い返し、またある時は懐柔して……とやっているうちにすっかり仲良くなってしまった二人が、平和を乱そうとする勢力相手に協力したり、全力で遊んだり、本気の殴り合いをしたり。友情以上恋愛未満くらいの所で絆を築いていくのが良かった。そして、お互い全く「名ばかりの強者」ではないんだよなあ。敵対勢力を本気パワーで撃退する展開なんか俺TUEE的な爽快感すらある。しっかり設定に裏打ちされた安定感のある土台の上で、世界最強のバカどもがその本気の力でバカをやる、という構図が最高に楽しかった。

 ただ、個人的にどうしても気になってしまったんですが主人公、なんで「高尾山」に住んでるって設定なんでしょうね……地元市民としては「東京ディズニーランドトゥモローランドにある勇者の家」くらい無理があってどうしても気になってしまった。いやそれとも「高尾山東部」という表現が多発するので高尾山の周囲を含めた八王子市の西側が「高尾山」って地域になってるとおもっているのか(多分舞浜市東部、くらいのノリで『TDR東部』って言ってる雰囲気)。こういうのって作者さんはともかくとして編集からツッコミはいらないんですかね……ファミ通文庫の編集部って都内でしょ……。

 続巻があるなら「勇者母の魔法で人払いの結界を張ってる」とか「高尾山の所から入れる鏡面世界」とか「実はめちゃくちゃ勇者の家も観光地扱いされてる」とか……なんでもいいからなんかとにかく“現実の高尾山とは違う”みたいなフォロー欲しいなぁ。